本研究は、日本文化政策史をトランスナショナルな文脈から再考し、一国に独特な現象に見える「文化」というものが実は他国との関係から「政策」として形作られていくものであることを明らかにする。日本は、戦時期には欧州の文化政策の方法論を受容し、占領期にはアメリカの文化的浸透と競う中で、自国文化に対する自信を高揚させてきた。他方、高度成長期には、自らの文化政策の経験を解放後の韓国に教示してきた。 本研究の目的を達成するため、過去4年間にわたって行った研究調査は、おおむね順調に進展してきた。たとえば、①単行本の作業、②英文ジャーナルへの投稿、③資料調査、④学会発表など、といった研究活動がバランスよく実行された。 最終年度のH25年度には、単行本の初稿に基づいて、出版社の編集者と具体的な刊行年度について日程を見込むことができた。また、韓国、アメリカ、オーストラリアから刊行される査読付英文ジャーナルに複数の論文を投稿してきたが、そのすべての掲載が決まったことは大きな成果といえる。学会発表においては、東京と香港で開かれた国際シンポジウムに参加したが、同学会の参加者の中には、アジア諸国からの研究者が多く、相互意見を得ることができた。同学会では、個人研究の発表を行っただけでなく、討論者としても参加し、関連分野の研究者の成果について協力を行った。 これからまたさらに本研究を深めていくための計画を立てる予定である。
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