7月までは、19世紀のアメリカ先住民統治政策(土地政策・教育政策・処罰過程)について調査をした。具体的には、内務省インディアン局の局長文書や、「文明化」教育を行っていた各地のインディアン寄宿学校が発行していた学校新聞を資料にして、それを読みこんだ。 8月には、世紀転換期におけるアメリカ・フィリピン統治政策(土地政策・教育政策・処罰過程)について調査をした。具体的には、フィリピン委員会文書の公文書資料を読みこんだ。また、1900年以降にアメリカで開催された万国博覧会(セントルイス博覧会など)におけるフィリピン植民地展示に注目して、その展示のポリシーについて調査した。 9月以降は、それまでの調査結果を利用して、19世紀におけるアメリカ先住民政策と、20世紀におけるアメリカ・フィリピン植民地政策・プエルトリコ植民地政策とを、比較しながら考察していった。その結果、強制移住を前提とする土地政策、「手作業」教育に主眼が置かれる教育政策、合衆国軍による処罰過程などについては、強い類似性がみられることが分かった。また、19世紀のアメリカ先住民政策を20世紀の植民地統治の先行例として言及する軍人・政治家・教会関係者の発言が見つかった。そのうち、軍人・教会関係者について言えば、国内の先住民統治と植民地統治との間に強い人的関連性も見られることが分かった。こうした分析から、アメリカ合衆国について本土から植民地に先住民に関わる諸政策が転用されていたといえることが分かった。 3月は、サモア関係の資料を調査した。サモアについては、二次資料中心の読み込みとなったが、来年度以降、海軍関係の資料の収集と読み込むことにより、一次資料に依拠した歴史研究が遂行可能との見込みがたった。
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