研究課題/領域番号 |
22710261
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 壮一郎 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (80512243)
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キーワード | 土地・森林資源 / 生活資源 / 地域社会ガバナンス / フレーミング |
研究概要 |
サハラ以南アフリカ各国では、1990年代の構造調整政策以降の「民主化」政策の一環として地方分権化がすすめられた。以後、コミュニティ(地域社会)のポテンシャルを生かした地方行政や地域開発政策がデザインされるようになっている。2000年代に入ってからとくに注目されるのは、コミュニティ基盤型、あるいはコミュニティをとりこんだ協働型の地域の資源管理政策だ。本研究の目的は、こうした背景のもとでの地域諸社会における資源コンフリクトの発生と調停のプロセスの実態を把握し、住民参加型の資源ガバナンスの再検討をすすめることにある。方法的特徴は、東アフリカのウガンダ共和国での現地調査で得た実態データならびに地方行政の文書記録など具体的事例から検討を加えること、土地・森林などの資源を抽象的な「自然資源」ないし「環境」としてではなく、住民の視点からみた個別具体的な有用性を担った「生活資源」としてとらえていくことの2点である。 第2年次の平成23年度は、現地調査で継続的に土地・森林などの資源をめぐるコンフリクトの事例を収集しつつ、それらの整理にあたった。まず、1.村レベルでの地方評議会、親族会議にて資源コンフリクトがどのように審議されているかについて、それぞれ現地で得た事例データをもとにしての整理・記述を試みた。次に、2.都市近郊農村部(森林保護区周辺の土地・森林資源)と遠隔地農村部(東部の国立公園周辺の土地資源)とで資源コンフリクトのあり方を比較し、その差異を検討した。とくに、NGOのアファーマティブアクションと地域住民との連携や、マスコミ報道、SNSを通じてのコミュニケーションなどと連動した地域住民の当該コンフリクトのフレーミング(問題化)のあり方について検討した。 23年度中は、これらの調査研究成果について、研究会発表、一般書のチャピター、事典項目などの形で公表をすすめた。住民、地方政府、NGOなどが協働した地域社会ガバナンスのモデルが称揚されるようになって久しいが、現地調査に基づいた実態把握からそのモデルに修正を加えていく作業は依然として待たれている。本研究はこの主題に関して議論の材料を提供し、貢献できるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査および研究会等での口頭発表(日本語、英語とも)は予定通りにすすめることができた。論文による公刊は、査読付き学術誌への投稿準備が遅れているが、当初予定していなかった一般書への寄稿によってこれまでの調査研究成果の一部を公刊している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。継続的に現地調査で収集したデータの整理と分析をすすめる。そのさいに必要となった補足データの収集のために、1週間程度の短期現地調査を1-2回おこなう。こうしたことと並行して、国内外の学会・研究会などで口頭発表をおこない(国内1回、海外1回)、それらの口頭発表の内容をブラッシュアップしながら、査読付き学術誌への投稿を目指す。
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