本研究の目的は、地方分権化政策後のアフリカ地域社会において、土地・森林などの資源をめぐるコンフリクト発生と調停の実態把握をおこない、住民参加型の資源ガバナンスを再検討することにあった。そのさい、在来の紛争調停の諸実践と、分権型の政府資源管理機関やNGO、住民組織などの新たなアクターが、資源利用や紛争調停へのかかわりとの双方に着目した。 最終年度にあたる24年度は過年度までに入手した現地調査データの整理と分析をすすめ、国際学会での発表、書籍チャピター論文としての公刊をおこなった。また、アフリカの研究者との議論をおこなうためのワークショップを実施した。 本研究の成果は、(1)土地や森林を抽象的な「資源」としてではなく、現地住民の生計にかかわる具体的な有用物として捉え、貨幣経済とのかかわりから有用性そのものも変化するなかで新たなタイプの紛争が生じていること、(2)分権型の政府資源管理機関やNGO、住民組織など新たなアクターとの関係形成のあり方が住民のなかでは様々であり、その様々な関係性がそのまま在来の資源利用・紛争調停のやり方での対処の現場に反映され、方向付けられること、(3)こうした新たなタイプの紛争や関係形成は、NGOやラジオ、新聞などのメディアをとおした住民による「問題の再帰的な把握(リフレーミング)」のもとでなされていること、などが明らかになったことである。
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