本研究は、高齢者福祉施設で働く男性ケアワーカーのキャリア形成に対する影響要因を明らかにすることを目的としており、男性介護職員を対象とした縦断的調査研究を実施した。今年度は、すでに収集されたデータをテキスト化したデータをもとにして、グラウンデッド・セオリー法を参考に分析を行った。 専門職として、約8年間の在職期間中における職場異動や職位・職種の変化、離転職を含むキャリア変遷をたどりつつ、それぞれのキャリア形成に影響を与えている要因は何かを検討した。 本研究における調査協力者は19名であるが、厳密に初回調査時に介護職として勤務していた者のみを対象としたため、分析対象者は12名とした。12名の現在の職種職位は、有限会社代表取締役(管理者)1名、生活相談員5名、介護職員6名(内、主任3名、副主任1名)である。調査対象者の半数以上が、わずか8年間に職場や職種の変更を行っており、介護職として継続している者も半数以上に主任や副主任への職位の上昇がみられた。 次に、キャリア形成に影響を与えた要因としては、スーパーバイザーや上司の存在が大きく、キャリア目標の設定には役割モデルの存在やスキルの向上、賃金等の労働条件が影響を与えることが示唆された。また、縦断調査の期間に燃え尽きの経験をした者も数名含まれており、職場組織の経営方針や適切なサポートの有無はキャリア形成のあり方に影響を与えるとともに、就労継続意欲に強い影響をもつことがわかった。介護職場においては、職種変更の希望が離転職の要因になることや、比較的容易に離転職が繰り返される傾向が指摘されているが、このような離転職の要因や課題についても示されることになった。 本調査の研究成果については、一部を日本社会福祉学会第60回大会において発表した。また、インタビュー調査データを整理分析した内容を報告書にまとめた。
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