研究課題/領域番号 |
22720001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
眞嶋 俊造 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50447059)
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キーワード | 応用倫理学 / 戦争倫理 / jus in bello / 民間人保護 / 回復的正義 / 正戦論 / 武力紛争 |
研究概要 |
本研究の目的は、平和と武力紛争に関する応用倫理学研究において、紛争の犠牲者への回復的正義の理論的妥当性および必要性について倫理学的基礎づけを行うとともに、それを実現・実施していくための方策を示すことにある。そのために、(1)回復的正義の位置づけと文脈化、(2)国際法及び「正戦論」との関連性、(3)回復的正義の実現・実施のための方策、以上の3つを研究の3本柱としてそれぞれを明確化することにある。武力紛争における回復的正義の理論とこの概念に基づく平和の実践とを架橋するために、回復という概念武力紛争における正義をより包括的な概念として再構成するための重要な要素の1つであることを示す。 当該年度においては、(2)回復的正義と紛争における正義を取り巻く法的・倫理的規範との関係性、およびそれら既存の規範における回復的正義の位置づけを行った。武力紛争における法的・倫理的規範は、暴力の抑制ないし禁止を主眼とした国際法や、戦争の正義および戦争における正義について限定的かつ抑制的な規定を試みた「正戦論」である。Primoratz(2007)およびOrend(2006)の議論を基にしてそれらの規範を検討することにより回復的正義の概念とを関係性を明らかにし、またそれら規範における回復的正義の位置づけの明確化を試みた。こめ作業を通して紛争における正義に関わる既存の規範と回復的正義とのギャップを明らかにした。具体的には、武力紛争において正当とされる攻撃に巻き込まれた民間人に対する補償が、その必要性が道徳的に基礎づけられるにもかかわらず、実践において看過されているという点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究の目的は、回復的正義の位置づけと文脈化と、国際法及び「正戦論」との関連性を明らかにすることであった。これらの研究目的は、現在までの論文や学会発表の成果として達成されている。また、これまでの研究の進捗状況は当初に研究計画にほぼ沿っており、最終年度における研究目的である、回復的正義の実現・実施のための方策について平成24年度当初より研究に着手することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、これまでの研究の進捗をもとに、現代の武力紛争において回復的正義を実現・実施するための方策を探ることである。具体的には、紛争において回復的正義が求められる状況を創出、ないしその実現・履行が求められる行為者が従う規範および行動様式を実証研究により明らかにする。より具体的には、政府及び軍事組織による回復的正義の実施状況とその効果を明確にした上で、理念的なあり方とこれまでの現場での実施状況とのギャップを少しでも埋めるための方策を提言することを目指す。また、平成24年度は最終年度にあたるため、研究の取りまとめを行う。
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