今年度は、ライプニッツの数理哲学の特異性を哲学史的側面と数理哲学的側面から浮き彫りにする作業を行った。具体的には、デカルトないしデカルト主義哲学に関する研究文献を古典的なものから最近のものも含めて範読し、想像力概念に関する解釈の現状と問題点を整理した。また、ライプニッツのアカデミー版全集第6系列(哲学部門)に収録されている遺稿を、想像力、図形、記号をキーワードにして内容別に分類し、それらの概念に関する断片的な記述を整理し、ライプニッツ哲学における位置づけを検討した。こうして、数学的認識に関するライプニッツの哲学的思考を解明する基盤整備を進めることができた。 さらに、主として数学史関連の先行研究を手掛かりにして、ライプニッツの数学論文・遺稿を検討し、多くの事例においてライプニッツが多義的な仕方で図形を用いていること、および、その多義性が決定的な仕方で機能するがゆえに、インフォーマルなレベルで、連続性や無限など、同時代でも既にその哲学的基礎づけが疑問視されていた概念の操作が可能となり、数多くの数学的成果に寄与したことを明らかにした。こうした実際の記号および図形運用を検討することで、哲学的基礎付けに重点が置かれた従来の研究では十分に解明されなかったライプニッツの数理哲学の特徴を部分的に解明することができた。 以上の研究成果の一部を2011年10月にハノーヴァーで開催される第9回国際ライプニッツ学会にて発表することが決定している。
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