研究課題
本研究の目的は、(1)複合的人道危機に対する国境を越えた救援が「なぜ」なされるべきか、その倫理的根拠を明らかにするとともに、(2)それによって成立するはずの国際的救援が失敗したり、負の影響を及ぼした場合、それを倫理上いかに考えるかを解明するところにある。今年度は、主に(1)の課題に取り組み、次のような成果を得た。まず、「英国学派」国際関係論と規範倫理学の組み合わせによって生まれうる倫理的根拠については、国家間社会をより重視する功利(相互)主義的倫理と、世界社会をより重視する義務論的倫理とが考えられた。これをもとに、「人の強制的移動」の文脈にそれぞれを応用し「庇護の倫理」と「保護の倫理」とを、それぞれ導き出した。そのうえで、歴史的発展に伴い、前者から後者へと、救援の根拠となる倫理観が移行していったことを論じた。以上をまとめたのが、論文'From Asylum to Intervention'である。これとは別に取り組んだのが、救援倫理が持つ西洋的性格についての是非をめぐる考察である。救援行為自体は文化の違いを問わずに行われてきたものであるが、それを支える倫理観が事実上近代・西洋的思考に基づいている点をどう理解すればよいかが問題となった。そこで、当初の課題を進める前段階の考察として、国際倫理が持ちうる西洋的性格を、「英国学派」の限界と関連させて論じた。この考察は、論文'International Relations as Cosmopolitan History of Idea'ならびに、論文'The Post-Western Turn in International Theory and the English School'に反映されている。それぞれの研究成果はいずれも国際学会にて公表され、活字化された。とくに二番目の研究については、複数の海外研究者から好意的なコメントが寄せられた。
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Working Paper, the Institute of Social Ethics, Nanzan University
巻: (5月刊行確定 未定)
Ritsumeikan International Affairs
巻: 9 ページ: 81-102
Ritsumeikan Annual Review of International Studies
巻: 9 ページ: 29-44
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/ras/04_publications/ria_en/9_04.pdf
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/e-vol.9/03Josuke%20Ikeda-pdf
http://ethics.let.hokudai.ac.jp/ja/files/programme02nov10.pdf