本研究の目的は、(1)複合的人道危機に対する国境を越えた救援が「なぜ」なされるべきか、その倫理的根拠を明らかにするとともに、(2)それによって成立するはずの国際的救援が失敗したり、負の影響を及ぼした場合、それを倫理上いかに考えるかを解明するところにある。今年度は現時点までに、(1)の課題を完成させると同時に(2)の作業に取り組み、以下の成果を得た。まず(1)に関しては、昨年度までの成果をまとめ、『社会と倫理』誌へ論文を寄稿した(2011年9月末現在で掲載決定。現在校正作業中)。(2)については、問題を考えるうえでの方法論的検討を進め、メタ倫理学の議論を用いた分析枠組みの有効性を論じる論文の作成に着手した。また同時に、(ア)選択的介入に関する議論の精査、(イ)国際機構が行う不正な行為に関する責任論の精査を進めた。なお、研究代表者は、2011年10月1日をもって海外の大学に就職したため、9月末日にて科研費資格を喪失したことになるが、以上の取り組みについては今年度中に論文として結実させる予定である。
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