研究課題/領域番号 |
22720025
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
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キーワード | アッシリア学 / メソポタミア / 楔形文字 / 粘土板文書 / 儀礼論 / シュメル語(シュメール語) / アッカド語 / 宗教史 |
研究概要 |
本研究は、前二・一千年紀メソポタミアの神殿祭儀において朗唱されたエメサル祈祷、特にバビロンの都市神マルドゥクに捧げられた長大なバラグ祈祷『賢き主、顧問』を研究する。この祈祷の本文が記された粘土版写本を基に祈祷文の校定を行い、さらに当該祈祷に焦点を当てながら当時のメソポタミアにおける祭儀、神学そして政治を巡る、問題を研究する。本研究は、全エメサル祈祷文書の体系的な定本作成の一部であり、同時に申請者が目指す古代メソポタミアにおける政治・宗教的領域を解明する研究の一部である。このような長期的計画を見据えたうえで、本研究はその期間中に祈祷『賢き主、顧問』の底本完成とこれを足がかりとしたメソポタミア宗教史の研究を目指す。 昨年度に実施したマクドゥクとニヌルタのバラグ祈祷の文献学的・宗教史学的比較研究によって得た結果を基に、本年度は(1)祈祷『賢き主、顧問』本文難解箇所の校訂、そして(2)諸祈祷文書に認められている間テクスト的関係の宗教史的背景に関する考察に取り組んだ。特に、これまで明らかにされて来なかった諸祈祷文書の編纂過程の復元、そして、当時の神学者が祈祷文編纂に推進する背景となった政治的な神学・祭儀改革の研究を行った。この研究は、特に夏期(7~9月)のドイツ連邦共和国ハイデルベルク大学西アジア言語文化学科専門図書館における研究滞在で行い、それら成果の一部は日本オリエント学会大会で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイデルベルク大学の専門図書館における研究滞在をはじめ、関連する課題に取り組む海外の共同研究者との連携が順調に進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度にほぼ完成した祈祷本文に英文の注釈を付す。本年度の研究によってある程度復元した祈祷編纂過程をより精緻化し、その背景となる神学・祭儀改革の問題に関する研究をさらに進める。
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