研究課題/領域番号 |
22720025
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シュメール語 / アッカド語 / 楔形文字 / 粘土板文書 / 儀礼論 / 宗教史 / メソポタミア / アッシリア学 |
研究概要 |
本研究は、前二・一千年紀メソポタミアの神殿祭儀において朗唱されたエメサル祈祷、特にバビロンの都市神マルドゥクに捧げられた長大なバラグ祈祷『賢き主、顧問』を研究する。この祈祷の本文が記された粘土板写本を基に祈祷文の校定を行い、さらに当該祈祷に焦点を当てながら当時のメソポタミアにおける祭儀、神学、そして政治を巡る問題を研究する。本研究は、全エメサル祈祷文書の体系的な定本作成の一部であり、同時に申請者が目指す古代メソポタミアにおける政治・宗教的領域を解明する研究の一部である。このような長期的計画を見据えたうえで、本研究はその期間中に祈祷『賢き主、顧問』の定本完成とこれを足がかりとしたメソポタミア宗教史の研究を目指す。 本年度は祈祷『賢き主、顧問』のクリティカル・エディションを作成した。加えて、ニヌルタ・マルドゥク祈祷に認められる間テクスト性とその政治・宗教史的背景の研究、同種祈祷文書の研究など関連する個別研究を推進した。後者の例としてはニンリル女神(ムリッス女神)に捧げられるために作成された後、ニネヴェのイシュタル女神に転用するため書きかえられた祈祷文の祭儀的・神学的脈絡に関する研究があげられる。この個別研究では、当該祈祷が祭儀的にはニネヴェのアキートゥ祭、アッシリア王の凱旋パレード、そしておそらくライオン狩りの脈絡に位置付けられること、神学的には神話的物語作品『エヌマ・エリシュ』に見られるような「神々の戦争」とアッシリア王の戦争の神学的な関係づけの脈絡にこの祈祷が位置することを明らかにした。加えて、ニネヴェ市がニップル市の祭儀的トポグラフィーを取り入れた可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の主たる目的である祈祷文のクリティカル・エディション作成のみならず、上記の通り、関連した個別研究も進んでいる。また同ジャンルの他の祈祷文の校定に取り組む現地や欧米の研究者との連携がスムーズにすすんだ。
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今後の研究の推進方策 |
作成したクリティカル・エディションを原稿化して出版する。同分野の研究に取り組む現地や欧米の研究者並びに主たる博物館のスタッフと連携を取りながら研究を進める。ウリ・ガッバイ(エルサレム・ヘブル大学)、シュテファン・マウル(ハイデルベルク大学)、アン・レーネルト(ミュンヘン大学/ハーバード大学)、ジョヴァンナ・マティニ(ハイデルベルク大学)、マンフレッド・シュレッター(インスブルク大学)、ジョン・テーラー(大英博物館)など。このため、必要に応じて海外に主張する。
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