研究課題/領域番号 |
22720026
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
土井 裕人 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80568402)
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キーワード | 宗教学 / 新プラトン主義 / 神秘主義 |
研究概要 |
本研究では、西洋神秘主義に大きな影響を与えた新プラトン主義者であるプロクロスの著作『ティマイオス註解』に取り組んできたところであり、平成23年度はオケーマ(乗り物)という重要概念を中心として考察を進めるとともに、この問題の検討に相当な時間を要することもわかってきている。これにより、プロクロスはじめ古代末期の新プラトン主義者たちにとってのオケーマは、いわば心的作用の受容器官とされるように例えば認識論として哲学的側面において大きな意味を持つのみならず、「神に似ること」に焦点を結ぶ宗教思想的側面においても神的諸力の経由するところという極めて重い位置にあることが明らかになった。こうした研究の成果は、日本宗教学会第70回学術大会における「プロクロスにおけるオケーマをめぐって」と、筑波大学哲学・思想学会第32回学術大会における「宗教思想としての新プラトン主義をめぐる一考察」に分けて発表した。また、これらの内容は鶴岡賀雄・深澤英隆(編)『スピリチュアリティの宗教史(下巻)』に収載された論文「西洋古代の宗教思想と「スピリチュアリティ」の問題」にて活字化された。 また、古典文献を基にした宗教思想研究へ情報学の成果を活用しうる方法論については、関連する国際シンポジウムおよびワークショップへの参加や、海外の大学から発表された研究に活用されうる新たなソフトウェアの検討などを進めた。これらの研究成果は、『筑波大学宗教学・比較思想学論集』第12号に「テクストのマークアップによる思想研究の試み-CATMAによるプロクロス『神学綱要』の分析-」というテーマで掲載され発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果発表が論文2本、学会発表2本となったとともに、宗教思想研究への新しい方法論の導入について、新しい成果を発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで取り組んできた西洋神秘主義に大きな影響を与えた新プラトン主義者であるプロクロスの著作『ティマイオス註解』であるが、同書は大部の著作であり、検討に時間を要しているため、引き続いて『ティマイオス註解』の宗教思想の解明にあたる。 併せて、従来から取り組んでいる古典文献を基にした宗教思想研究への情報学の成果の活用についても、宗教思想の比較研究に対して新たな方法論を提示すべく、引き続いて研究を実施する。 また、偽ディオニュシオス・アレオパギテス『天上位階論』については、神秘主義的な「神化」と「合一」について、上記の成果を取り込みつつ研究を行う。
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