本年度は、本研究の最終年度としていっそうの研究推進を図り、特に人文情報学に関連しては世界的にも新しい手法の導入と成果発表を行うことができた。 前者については、日本宗教学会第71回学術大会(於皇學館大学)にて「プロクロスにおける「神に似ること」の問題」として口頭発表を行い、『宗教研究』第86巻第4輯に掲載された。これは、従来明らかではなかった宗教思想としてのプロクロスの位置づけについて、プラトン以来の「神に似ること」に照らして検討し、偽ディオニュシオス・アレオパギテスら後世の神秘主義思想へつながる基盤を明らかにしたものである。 後者については、「思想研究へのマークアップと視覚化の応用―プロクロス『ティマイオス註解』の分析と視覚化」として『宗教学・比較思想学論集』第13号、2013年3月に掲載・刊行された。これは、XMLを用いたマークアップをCATAMAというツールを用いて行った前年度発表の論文の内容を発展させ、d3.jsというソフトウェアライブラリにより思想の「可視化」を試みたものであり、思想研究においては世界初と思われる研究である。 また、西洋古代の宗教思想に関するこれまでの研究に評価を頂いたことから、松村一男・平藤喜久子・山田仁史(編)『神の文化史事典』(白水社、2013年1月刊)では33項目の執筆依頼を受け、古代ギリシアを中心とする項目の担当を行った。この事典は一般読者にも好評を博し、刊行早々に重版となっている。 なお、本研究のうち、人文情報学を中心とする領域については、平成25年度より開始される若手研究(B)「西洋古代を中心とした宗教思想研究への人文情報学の応用」にて、引き続き研究を推進することとなる。
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