研究課題/領域番号 |
22720030
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
井上 まどか 清泉女子大学, 文学部, 講師 (70468619)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宗教文化教育 / 宗教教育 / 宗教 / 正教 / イコン / 記憶 / ロシア人論 / ソ連解体後 |
研究概要 |
本研究課題は、宗教文化教育が今日のロシアにおいてどのような機能を担っているか、という問いをロシア連邦の公立学校において実施中の宗教文化科目、および宗教文化教育をめぐる諸言説を通じて明らかにするものである。 本年度は①宗教文化教育はどのような媒体を通じて行なわれる可能性があるのか、②宗教文化教育の実施・推進において、「宗教文化」はいかに語られているか、また「宗教文化」をめぐる世論はいかに形成されているか、という点について考察を行なった。 上記の①は前年度から継続して分析・考察を行なっているものである。ロシア正教会のイコン(諸聖人等が描かれた平面の聖画像)が教育つまり知識や記憶の伝播の媒体としてどのように機能しているかを考察し、集合的記憶の伝播という機能を明らかにした。その成果が「チェルノブイリ・イコンによる記憶の伝播と共有」である。 ②については、「宗教文化」をめぐる語りについて、ロシアの作家・政治家・文化学者等が展開する「ロシア人/ロシア民族とは何/誰か」という語りから考察を行った。それらの言説におけるロシア人特殊論が、多民族国家(ロシア)においても正教(ロシア正教会)が中核となりうるとの主張を担保していることを明らかにした。その成果が論文「ユートピアがディストピアになるとき――ソルジェニーツィンのロシア論における悪の不在――」である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の達成のため、可能な限り包括的に問題に取り組もうと、努めて多角的な考察を試みた。また、それらの成果を論文のかたちで発表することで、他分野の研究者から多くの有益な指摘を受け、研究交流につながった点は、進展といってよい。しかし、宗教文化教育の実施過程についての研究成果を公にしていない点は、遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、ロシア連邦内の現地調査が組み込まれていた。しかし、分析・考察を行なう過程において、研究課題に沿ったさまざまな課題が発見され、文献・画像資料のさらなる読解・分析の必要性が生じてきた。そのため、これまで文献・画像資料を中心とした分析を行なってきたが、本年度は本研究課題の最終年度に当たり、これまでの分析をふまえて、包括的な最終成果をまとめることに集中する。 本研究課題の研究成果を、平成27年度に開催される2つの国際学術大会で公にし、海外の研究者との研究交流を深めるべく、本年度(平成26年度)は準備を進めている。この2つの大会とは、中欧・東欧研究国際協議会(ICCEES)という、ロシア・中東欧研究の国際学会の世界大会と、国際宗教学宗教史会議(IAHR)という宗教学宗教史学の国際学会の世界大会である。それぞれ幕張(日本)、エアフルト(ドイツ)で開催される。
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