最終年度(4年度目)にあたる本年度は、概ね以下の4つの方向での成果を上げることができたと考える。 1つめは、これまで得られた成果の海外への発信である。本研究の理論的支柱である拙著『中国化する日本』(文藝春秋、2011年11月)について、2013年5月に広西師範大学出版社より中国語版が、7月にPaperroad Publishingより韓国語版が刊行された。前者については、刊行元の招きに応じて訪中し、北京師範大学で講演も行っている。 2つめは、同様の成果の国内一般社会へのさらなる発信、および研究者間での相互批判を通した内容の深化である。具体的には、日本中世史家の東島誠氏との対談である『日本の起源』(共著、太田出版、2013年9月)、研究者6名を含む計7名との議論の記録である『史論の復権』(共著、新潮新書、同年11月)を刊行した。また『中国化する日本』自体についても、増補を行った上での文庫版(文春文庫)が、2014年4月に刊行される。 3つめは、上述のような一般向けの書籍の背景となる、理論的考察を諸論文集に学術論文として寄稿したことである。ここでは編者名を略すが、『北東アジアの市民社会』(国際書院、2013年4月)、『内藤湖南とアジア認識』(勉誠出版、同年5月)、『日本思想史講座4 近代』(ぺりかん社、同年6月)、『環日本海国際政治経済論』(ミネルヴァ書房、同年10月)がそれにあたる。また一般書ではあるが、理論的にリンクする単著として『日本人はなぜ存在するか』(集英社インターナショナル、同年10月)も刊行した。 4つめは、より具体的な研究対象たる思想家/言論テキストとして、山本七平を発見し、最初の論文を仕上げたことである。「歴史―山本七平と網野善彦」としてすでに校了済みであり、2014年夏に河野有理編『近代日本政治思想史』(ナカニシヤ出版)の一部として刊行される予定である。
|