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2012 年度 実績報告書

『ひですの経』の原典的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22720037
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

折井 善果  慶應義塾大学, 法学部, 講師 (80453869)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2013-03-31
キーワード思想史 / 東西交渉史 / キリシタン / 出版文化史 / 人文主義 / スペイン:ポルトガル:イタリア
研究概要

本年度の研究結果は三点にまとめられる。まず、昨年度に引き続き行ったキリシタン版の原本調査の結果、アメリカ、スペイン、オランダにおいて各一件、『キリシタン文庫』の著者J・ラウレス以来包括的調査が途絶えていた、所蔵先の移動の現状が明らかになった。海外におけるキリシタン版の所在が散逸する危険性を回避し、日本の文化遺産保存の一助となったと考える。
次に、キリシタン版の欧文原典の特定である。すでに知られている通称「バレト写本」(1591頃)が、スペインの修徳思想家であり『ひですの経』の原著者でもあるルイス・デ・グラナダのラテン語説教集『祝日の説教集』(全4巻、1575-1580)『諸聖人の説教集』(全2巻、1578)の構成を踏襲していることを考察した。
そして、これらの実証的な文献学的調査を踏まえて、対訳分析による内容の精査に着手した。そこで明らかになったことの第一が、トリエント公会議(1543-63)を前後するヨーロッパのルネサンス人文主義の影響である。同会議では、人が義とされるのは信仰のみではなく、人間側の自由意志による修徳的な働きかけにもよると決議された。これは極めて人文主義的な見方であるが、キリシタン版への翻訳に際して、このような倫理・道徳に関する教説が敷衍・増補されているという傾向が『ひですの経』の内容的分析では注目された。また、当時イタリアを中心に盛んであった新プラトン主義の代表的著作家(フィチーノ、ポンポナッツィら)の、霊魂(アニマ)に関する言及が、キリシタン版において名前を伏せて引用されている事実も明らかになった。以上のことは、ヨーロッパから日本への「受容」という一方向のみから論じられてきたキリシタン思想史の在り方に対して、当時の来日イエズス会士が置かれていた、ヨーロッパの複雑な思想的状況を逆照射した、「動的な」テクストとして読むことの重要性を提起した。

現在までの達成度 (区分)
理由

24年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

24年度が最終年度であるため、記入しない。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 図書 (2件)

  • [図書] キリスト教と日本の深層2012

    • 著者名/発表者名
      加藤信朗監修、鶴岡賀雄・桑原直己・田畑邦治編
    • 総ページ数
      302 (115-133)
    • 出版者
      オリエンス宗教研究所
  • [図書] Japon y Espana: acercamientos y desencuentros (siglos XVI y XVII)2012

    • 著者名/発表者名
      Maria Jesus Zamora ed.
    • 総ページ数
      354 (165-178)
    • 出版者
      Madrid: Editorial Satori

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公開日: 2014-07-24  

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