最終年度となる本年度は、レコンキスタ期のイベリア半島で制作された装飾写本の個別研究をもっと進める予定であった。挿絵の図像的分析などには一定の進展があった一方、夏の調査旅行で収集した修道院文書などの史料を詳細に分析し、現存する写本の図像プログラムや制作背景に直接結びつけられ得る記述を発見して論文というかたちで成果をまとめるまでには至らなかった。この点が非常に悔やまれる。 しかしながら、キリスト教圏とイスラームとの異文化交渉という本研究の中軸をなすテーマについて、きわめて限定的なものではあるにせよ、出版と口頭発表の機会が本年度持てたことは、これまでの研究内容を整理して今後の展望をあらためて考えるうえできわめて有用であった。 また、研究期間中に出会った先行研究のなかから、本研究とも直接かかわる「レコンキスタ」という言説のスペイン歴史学研究における位置づけを分析した書物と、ローマ教皇庁やフランスのクリュニー会などイベリア半島外のキリスト教圏との接触のなかから誕生したサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の最新のモノグラフィーとを選び、日本の学会誌に新刊紹介を行った。 なお、当初からの計画に含まれていた非欧米圏における西欧中世歴史学・美術史学の研究者とのネットワーク構築に関しては、本研究期間中に得られた成果を、2014年6月開催予定の西洋中世学会全国大会にてポスター発表を行う予定である(発表申請受理済み)。
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