イタリアの「樹木の聖母」事例研究の一環として、現ピエモンテ州ヴェルチェッリ県モンクリヴェッロの「樹木の聖母」巡礼地に関して、ヴェルチェッリ司教区古文書館において同時代史料および二次資料の閲覧、収集を行った。また、前年度に引き続いて、旧ミラノ司教区に属するスイス南部の諸都市(アスコーナ、ロンコなど)に現存する「樹木の聖母」画像を有する聖堂に関する調査を進め、ミラノ古文書館、ミラノ司教区古文書館において、16世紀末のミラノ大司教カルロ・ボッロメーオもしくはその代理人が行った巡察記録の調査を行った。加えて、16世紀中葉以降の「樹木の聖母」から「ロザリオの聖母」への図像の転換に関して、ミラノ国立図書館、ミラノ司教区古文書館、ミラノ市美術図書館で文献資料収集を進めた。 研究成果として、民族藝術学会全国大会において、前年度までの研究で得られたデータに基づいてイタリアにおける「樹木の聖母」の崇敬と図像の関係に関する口頭発表を行い、その内容に基づいて加筆・修正した論文「イタリアにおける「樹木の聖母」-崇敬と図像」を同学会誌『民族藝術』Vol.30上にて発表した。また、北イタリア(インヴェリーゴ、メッザーナ・スペリオーレ、ゴルラ・ミノーレ、カリマーテ、モンクリヴェッロなど)の巡礼地の創建、16世紀における増改築、図像の消失と残存を対抗宗教改革期ミラノ司教区における宗教画像の統制といった視点で考察した論文の発表を準備中である。
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