研究課題/領域番号 |
22720046
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
山本 聡美 共立女子大学, 文芸学部, 准教授 (00366999)
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キーワード | 美術史 / 日本中世絵画史 / 絵巻 / 仏教説話画 / 経典 / やまと絵 |
研究概要 |
1.作品調査:下記3件の絵巻に関する作品調査・撮影を実施した。(1)「地獄草紙」断簡(シアトル美術館蔵)、(2)「北野天神縁起絵巻(弘安本)」断簡(シアトル美術館蔵)、(3)「天地院縁起」(シカゴ美術館蔵)。さらに、(1)の比較対象として「地獄草紙」(メトロポリタン美術館蔵)、(2)の比較対象として「北野天神縁起絵巻(弘安本)」(東京国立博物館蔵)及び「北野天神縁起絵巻」(防府天満宮蔵)に関する展観の機会を得た。 2.画像の整理とデータベース化:上記の調査を通じて、部分図を含む詳細な画像データを蓄積した。また、既存の高精細画像(4×5ポジなど)も入手しそのデジタルデータ化を行い、データベース作成の準備を整えた。 3.分析と考察:経説を絵画化する場合の絵巻と掛幅における場面選択や表現上の差異に関して、引き続き『法華経』と『十王経』を軸に考察し、その途中経過を発表した。特に、掛幅「六道絵」(聖衆来迎寺蔵)における「閻魔王庁幅」のモティーフに、『白宝口抄』など密教図像集からの影響が認められる点について、論文を発表した。また、平安時代を通じて密教的なコンテクストにおいて信仰されていた閻魔天の属性が、鎌倉時代に至り浄土教的な閻魔王信仰と混交する現象について、経文と画像の双方から考察を進め、特に「北野天神縁起絵巻」(メトロポリタン美術館蔵)に登場する閻魔王には、その両方の属性が看取されるという分析結果を得た。現在、この点に関する口頭発表と論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作品調査に関しては在外重要作品を重点的に実施し、高精細画像を蓄積した。また、考察結果を学会発表と論文の形で順次公開している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度にあたっており、残された作品調査を可能な限り9月までに終え、データの分析と成果の発表に十分な時間を割く必要があると認識している。また過年度までの研究成果を踏まえて、経説絵巻という広範なテーマの中でも特に「追善と逆修の場に関連する経文とその絵画化」という論点が、考察の上での重要な軸として浮上してきた。さらに、絵巻(小画面)と掛幅(大画面)における、経文利用の共通点と相違点に関する比較検討という問題にも留意して、次年度の調査と考察を進める。
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