平成23年度は、前年度に引き続き、私寺として出発した寺院における造仏について検討するという研究計画であった。前年度は、京都・神光院において、平安時代前期につくられた薬師如来像について調査を実施し、これが神のためにつくられた仏像であることを明らかにした。 こうした平安時代初期の造像に理解を深めるために、本年度は(1)一木造の薬師如来立像のうち、制作年代が古く、特徴的な表現形式がみられるもの、(2)神仏習合にかかわる像と考えられるものという2つの切り口から、2件の調査を実施した。 一つは、兵庫・香雪美術館に所蔵される薬師如来像、もう一つは、京都・西遊寺天部形立像である。香雪美術館像は、重要文化財にも指定されておりよく知られている像ではあるが、一木彫像成立初期の様相を考えるうえで重要な作品と考えられた。後者の西遊寺像は、石清水八幡のふもとの西遊寺に安置される像で、もともと狩尾神社に安置されていたと伝えられる。八幡神が当地に勧請される以前につくられたと私考されるものである。したがって、石清水という地における、神仏の信仰のあり方を考えるうえで重要な像であると考えられる。とりわけ西遊寺像については、あまり広く紹介されているとはいえない。そのため、今後さらに関連資料の有無を調査したうえで、制作背景などを考察し、調査成果を公表したいと考えているところである。 なお、前年度に引き続き、平安時代の造営機構に関する資料収集を継続して行っている。
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