浅川伯教、巧研究の集大成として、本年度は博士論文を立命館大学に提出し、博士号を授与された。そのなかで、とくに本年度新しく調査した部分は、欧米および日本における韓国陶磁の受容と研究の状況、近代韓国の窯業状況、日本の近代産業陶磁の朝鮮半島への進出状況、オリエンタリズムの観点から見た近代韓国陶磁研究史である。 1.文献調査 : ①前年度にひきつづき、浅川兄弟、柳宗悦関連の原稿、諸資料の目録をさらに補充し、約1000点以上の目録をほぼ完成させた。②近代の日本産業陶磁がどのように朝鮮半島に進出したのか、当時の貿易関係の史料『通商彙纂』を精査し、整理した。この史料は有名なものではあるが、この分野に関しては従来まったく使用されておらず、そのため今回かなり詳細かつ新たな情報を得ることができた。 2.現地調査 : 欧米における韓国陶磁の受容、研究にかんして、ロンドンおよびパリの各種美術館、博物館で、学芸員の協力のもとで調査を行った。その結果、欧米における高麗青磁の収集にあっては、そこにかなり日本人が介在していたことを確認することができた。これは従来の研究では指摘されていなかった点である。 3.調査研究成果の発表 : ①東京国立近代美術館で研究発表をし、浅川兄弟の活動が、いわゆるジャポニスムに似たコリアニスムとでも言うべきものだったことを指摘した。また、本研究をまとめた論文を執筆した。②上記の日本産業陶磁についての論文を発表した(刊行は平成25年5月)。③博士論文の内容全体については、朝鮮史学会で発表の予定(平成25年7月)。
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