本年度は、東南アジアのマイクロインダストリー、特にタイ、ミャンマー、ラオスにおける手織物産業に関する文献収集及び現地での情報収集に力を入れ、その特徴を明らかにした。前半は、当該地域における手織物産業と地域の特性について先行研究文献研究を行った。22年11月には、タイ北部チェンラーイ県チェンコーン地区でのタイル一族の伝統的な巻きスカート「パーシン」を現代に継承し、OTOP製品としてビジネスモデルにしている村での調査を行った。12月にはラオス、タイ国チェンマイ市にて調査を行った。ヴィエンチャン、ルアンプラバーン、チェンマイでは、手織物を用いて地元民の収入源獲得の機会を創り出している工房や、NGOにおいてインタビューを行うことが出来た。一方、ムアンシン、ルアンナムターでは、山地にすむ少数民族の織物産業を調杳した。また、23年3月には、英国ロンドン大学ゴールドスミス校にて、アフリカの織物を織っているイギリス人染織家や、英国工芸品協会会員と工芸品に関する、伝統文化継承とマーケティングについての意見交換を行った。マーケティングが重要な理由は、工芸品は、売れなければ作り手は生活できないため、物にストックされてきたデザインや技術に表象される文化が衰退してしまう為である。23年7月にはミャンマー国内のヤンゴン、シャン州、マンダレー管区、ラカイン州にて手織物の調査を行った。 明らかになった点は、タイでは、村落内で生産組合を結成することで、マーケティングおよびビジネスの機会を高めているのに対し、ラオス、ミャンマーでは、生産組合は大都市の一部で協会があるのみ、あるいは、存在しなく、生産者は個人プレーで生産から販売までこなしていた。また、後者ではいわゆる、問屋制手工業が盛んであった。前者は、手工芸品が「日用品」から「趣味のもの」に変わりつつあるのに対し、後者二者は、手工芸品がまだ「実用品」である為である。
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