研究課題/領域番号 |
22720061
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平芳 裕子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50362752)
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キーワード | ファッション / お針子 / 19世紀 / 産業革命 / 裁縫 / 女性 / イギリス / アメリカ |
研究概要 |
本研究は、19世紀半ばのアメリカを中心とする「お針子」の表象を明らかにすることによって、近代的な「ファッションと女性性」との関係がいかに成立したのか、すなわち「自ら作り、着飾り、視る」という女性たちの自家撞着的な欲望がいかに構築され、「ファッションを女性的なもの」と見なす近代的視線が生成したのか、その歴史的経緯を明らかにするものである。本年度は、19世紀半ばのアメリカの出版物において頻繁に転載・引用されたイギリスのお針子像に関する考察を論文として発表した。研究を通じて明らかとなったのは以下の点である。政府による児童雇用委員会の報告書を契機として、ロンドンの雑誌メディアにおいて、過酷な労働に携わる下層階級のお針子たちの悲惨な姿が描写されるようになった。しかし絵画や小説においては「内なる家庭」に留まり「裁縫」に携わる女性たちがさかんに描写された。糸紡ぎや機織りが機械化された産業革命の時代に、「裁縫」は下層階級の単なる労働としてではなく、あらゆる女性の携わる「女性の仕事」としての一層の価値を付与されるようになる。以上の研究成果をふまえた上で引き続き、19世紀アメリカの女性誌、とりわけ1840年代から50年代の『ゴーディズ・レディズ・ブック』の調査と収集を行い、19世紀のアメリカにおけるお針子の表象が、イギリスのお針子の表象に影響を受ながらも、いかに展開してきたのかについて考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進めていくうえで、19世紀アメリカにおけるお針子の表象は、イギリスにメディアに影響を受けていることが発覚し、新たな問題設定の必要が生じた。新しい問題系に対する資料の調査、収集を行った上で、考察結果を論文としてまとめたために、当初の全体的な研究計画からはやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、ファッション産業の進展とともに1840年代から1860年代にかけてのメディアにおける表象(お針子、型紙、ミシン)の変化を明らかにする予定であったが、これまでの調査の結果、とりわけ「お針子」像の同時代における変容が顕著であるため、「お針子」像を中心に改めて収集資料の読解・考察を進める予定である。
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