研究2年目である平成23年度は、聴覚文化研究・都市文化論の接合点に関する理論的研究、都市空間における視聴覚文化の継続的な調査と、メディア空間の聴覚文化に関する資料調査と分析作業を継続的に進展させた。研究計画書に記載された研究計画・方法の項目別に以下に列挙する。 (1)メディア空簡と分かち難く結びついた都市空間における聴覚文化の調査・分析:ネット空間における聴覚文化の構造を検討すべく、SNSや動画配信サイトにおける音楽表象・都市空間表象の調査と理論研究を進行させた。さらに大阪の都市空間のフィールドワークを実施し、商業空間、公共空間(街路や公園)等のサウンドスケープと景観との相互作用について、定期的な観察・調査を行った。 (2)メディア空間における大衆音楽が、大阪という都市空間のイメージを構築してきた過程についての調査・分析:大阪の都市イメージに関する資料収集およびメディアに表象される大阪のトポスについての分析の基盤構築を進めた。並行して、日本でのレコード産業およびラジオ放送の勃興期(大正~昭和初期)から高度成長期、平成期にかけての大衆音楽史に関する網羅的な資料収集を継続した。 (3)両者の相互作用を包括的に把握する理論化作業:聴覚文化論文献の研究会を関西の若手研究者と組織し、関連する理論的諸問題について討議する体制を整えた。また、日本ポピュラー音楽学会全国大会を大阪市立夫学にて実行委員長として開催し、東日本大震災に伴うネット空間と都市、そして音楽をはじめとする聴覚文化の状況を討論する全体シンポジウムを企画・実施した。さらに、ネット空間における聴覚文化実践の諸問題、特に人工音声による集合的な音楽制作実践が投げかける諸問題を検討する目的で、関連研究者を招いた小シンポジウム(一般公開)を大阪市立大学船場アートカフェにて開催、ネット空間における聴覚文化理論の諸問題を討議した。
|