研究課題/領域番号 |
22720063
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
増田 聡 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (50325304)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大衆文化論 / 聴覚文化 / メディア論 |
研究概要 |
研究3年目である平成24年度は、聴覚文化研究・都市文化論の接合点に関する理論的研究をすすめると共に、大阪の都市空間における視聴覚文化の調査、およびネットメディア・マスメディア空間の聴覚文化に関する資料調査と分析作業を継続した。研究計画書に記載された研究計画・方法の項目別に以下に列挙する。 (1)メディア空間と分かち難く結びついた都市空間における聴覚文化の調査・分析:SNSや動画配信サイトにおける音楽表象・都市空間表象の調査と理論研究を継続。大阪の都市空間のフィールドワークは、特に商業空間(ショッピングモール、飲食店)、公共空間(街路・公園・公共交通機関)のサウンドスケープと景観との相互作用について重点的な観察・調査を継続した。 (2)メディア空間における大衆音楽が、大阪という都市空間のイメージを構築してきた過程についての調査・分析:大阪の都市イメージ資料収集、メディアに表象される大阪イメージに検討した。関連して、音楽以外の大衆文化の場所性に関する理論研究を行った。並行して、日本でのレコード産業およびラジオ放送の勃興期(大正~昭和初期)から高度成長期、平成期にかけての大衆音楽史に関する網羅的な資料収集を継続している。 (3)両者の相互作用を包括的に把握する理論化作業:聴覚文化論文献の研究会を関西の若手研究者と組織し、関連する理論的諸問題について討議した。日本ポピュラー音楽学会全国大会(武蔵大学)において、録音音楽の存在論に関するワークショップを企画し、若手研究者との討論を行った(このワークショップについては実験的にネット中継を行い、SNS空間における音楽言説の伝播過程を観察することができた)。さらに、平成23年度に実施した日本ポピュラー音楽学会シンポジウムの議論をうけ、ネット空間と現実空間における聴覚文化の動態についての試論として、東日本大震災時の音楽文化に関する小論をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全般に、本務校における改革に伴う諸業務の激増により、十分かつ連続的な研究時間を確保することが著しく困難になってきており、研究全体の進捗は遅れがちである。研究計画の内容に関連した達成状況については以下、研究計画書に記載された研究計画・方法の項目別に列挙する。 (1)メディア空間と分かち難く結びついた都市空間における聴覚文化の調査・分析:都市空間におけるフィールドワークを継続的に行うことが必須であるが、そのための十分な時間と機会が確保できず、短時間の断続的な調査を行うに留まっている。現時点でのフィールドデータはある程度の質・量に達してはいるが、十全な成果をみるためには引き続きの調査継続が必要である。 (2)メディア空間における大衆音楽が、大阪という都市空間のイメージを構築してきた過程についての調査・分析:大阪の都市イメージ資料収集、大衆音楽史に関する網羅的な資料収集は着実に進展しているが、それらを包括的に分析する作業が、前述の事情により滞っている。 (3)両者の相互作用を包括的に把握する理論化作業:聴覚文化論文献の研究会を関西の若手研究者と組織しているが、前述の事情により十分な時間と密度をもって参加し理論的諸問題を討議することが困難な状況となっている。それでもなお理論的作業は進行させているが、本年度の日本ポピュラー音楽学会ワークショップの討議などによって判明したのは、当初目論んだ都市空間・メディア空間における聴覚文化の理論化のためには、空間論以前に聴覚文化の存在論的な諸問題を解決する必要があるという点であった。そのため、本研究課題について満足しうる達成を見るためには、別角度からの計画の再調整ならびに研究期間の延長が必要となるように思われる。そのため、研究最終年度となる平成25年度は、次期研究課題に生産に連続しうるかたちでの理論的方向を模索する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述、現在までの達成度に示した現状に鑑み、今年度の研究の推進については下記の方策であたる。研究計画書に記載された研究計画・方法の項目別に列挙する。 (1)メディア空間と分かち難く結びついた都市空間における聴覚文化の調査・分析:フィールドワークの機会とその連続的実施の実現に全力を尽くす。 (2)メディア空間における大衆音楽が、大阪という都市空間のイメージを構築してきた過程についての調査・分析:大阪の都市イメージ資料収集、大衆音楽史に関する網羅的な資料収集を継続するとともに、その分析作業の時間と機会確保に全力を尽くす。 (3)両者の相互作用を包括的に把握する理論化作業:空間論・場所論的な諸問題について、その前段にあたるメディア論的・存在論的諸問題に注力することにより、次期研究課題に生産的な貢献を成すような方向での理論化作業を進行する。またそのための機会と時間の確保に全力を尽くす。
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