本研究は、日本映画の映像表現が、映画以外の諸芸能とともに、どのような文化的複合性のもとで形成されたのかを明らかにするため、無声映画期の映画館プログラムのデータベース構築を通じて、同時期の興行形態を把握する基盤的研究の確立を目的としている。上記の目的にもとづき、今年度は以下のように研究を実施した。(1)今年度に複写等によって収集した、映画館プログラムの「番組」のデータベース化を進めた。具体的には、仙台、東京、横浜、浜松、京都、大阪、佐賀および大連の各都市の映画館について、映画以外の各種実演も含めた、計2421件のレコードを作成し、web公開用データベース構築のための準備をおこなった。(2)映像表現の地域性との関連から、多数の撮影所が立地した東京および京都で発行された映画館プログラムを中心に、国内外のフィルムアーカイブにおける、その所蔵状況を調査した。この成果にもとづき、次年度において所蔵を確認したフィルムアーカイブで実地調査をおこない、今年度に作成したレコードと統合するためのデータを収集する。(3)ポルデノーネ無声映画祭(イタリア)において、無声映画および幻燈の劇場における興行形態の実地調査をおこない、日本における無声映画の興行形態との比較をおこなうための情報を収集した。(4)映画館の興行形態に関する今年度の研究の一部を、論文「映画館の〈誕生〉-電気館にみられた興行と観客の変容-」(岩本憲児編『日本映画史叢書15日本映画の誕生』森話社、2011年刊行予定)にまとめ、成果として発信した。
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