本研究はフランスの音楽政策について、「現在の音楽(ジャズ、ラップ、レゲエ等)」に対する施策に着目することで、その性格を明らかにすることが目的である。国や地方公共団体が積極的に文化政策を推進する典型例としてフランスは取り上げられる。それらは、音楽分野では例えばパリ・オペラ座やパリ管弦楽団など芸術音楽に対する支援状況が中心で、本研究が対象とする「現在の音楽」についてはあまり言及されない。 当然芸術音楽分野に対する支援は重要視されているものの、今後は「現在の音楽」に対する支援が一層重視されることが予想される。そこには純粋に音楽を支援するという目的のみではなく、フランスが抱える若者や移民層などの文化的順化をも企図しているものと考えられる。そこで本研究ではとくに「現在の音楽」に対する音楽政策を中心的に検討しているが、当該年度は文献調査、研究者や関係者からの専門的知識の提供に加え、2010年10月に実施した「MaMA (the international professional music event)」への参加は、行政と民間組織(非営利文化団体など)の協働による文化イベントの在り方という観点からも大変示唆を得られた。 その他にも「現在の音楽」分野の新人アーティストを支援するパリ市の公施設法人の活動も視察することができた。これらフランスの取り組みは、芸術音楽分野も含め既に実績のあるアーティストや団体ばかりを対象としていない点など、音楽分野に対する公的部門の役割やあり方を考えさせられた。
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