研究概要 |
本研究は、フランスの音楽政策について、「現在の音楽(ジャズ、ラップ、レゲエ等)」に対する施策に着目することで、その性格を明らかにすることが目的である。フランスの音楽政策は、オーケストラやオペラ等の芸術音楽と同様に、ジャズ・ラップ・レゲエ等の「現在の音楽(musiques actuelles)」に対しても、積極的な施策を講じている。 「現在の音楽」に対する政策は、例えば政府に批判的なラップの歌詞について検閲が行われるなど政府の方針とは対立する面もある一方で、音楽産業の育成や社会統合の手段として若者や市民を取り込んでいこうとする二面性がある。本研究では、「現在の音楽」政策の実態を調査することで、フランス音楽政策の全体像を明らかにすることが目的である。本年度は、研究最終年度として文献調査に加え、現地調査を中心に行った。パリでは、現在の音楽に関係する諸機関(アソシアシオン、ホール、教育機能を持つ団体等)をまわり、それらの機関において文献からは判りにくかった施策の具体的内容について質問したり、現在の施策についての意見を聞くことができた。昨今では、インターネットの発達により、多くの文献を入手することが可能となったが、実際に現地に赴くとインターネット上では見つけられなかった文献や文書を見ることができたのはもとより、関係機関でのヒアリング(特に「現在の音楽情報及び資料センター(Le Centre d'information et de ressources pour les musiques actuelles,IRMA)」)よって、前政権から計画があったが実現しなかった音楽センターの開設や実演芸術に関する新法が提出されていることなど、大きな知見を得ることができた。
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