本研究は、近代絵画などに大きな影響を与えたデ・ステイルの造形作品と、近代音楽に大きな影響を与えたアーノルト・シェーンベルクの音楽作品における共通性についての考察を通して、近代の芸術の変遷において、造形の歴史と音楽の歴史がお互いに影響を与え続けながら変遷していた事についてひとつの指針を導きだし、領域横断的な歴史研究の活性化を目指すものである。 本年度は、『De Stijl』誌とグループの創設者テオ・ファン・ドゥースブルフのアーカイヴ『Theo van Doesburg archiv』(Van Moorsel寄贈コレクション)を用いて、デ・ステイルにおける音楽に関する活動や論文、また音楽家との関係性について調査した。また、アムステルダム市立近代美術館、ハーグ市立美術館、ユトレヒト・セントラル美術館、シュレーダー邸、ポンピドゥー・センターの「Mondrian and De Stijl」展において、デ・ステイルの造形作品の調査、資料収集を行った。 また、ドゥースブルフの論文「Der Kampf um den neue Stil」において、デ・ステイルグループの造形と同様の実験を音楽領域で行っていた人物として、グループ唯一の音楽家ジョージ・アンタイルと同格として、アーノルト・シェーンベルク、カステルヌーヴォ・テデスコ、アルフレード・カゼッラが取り上げられており、これを「『De Stijl』誌における音楽の論文とアーノルト・シェーンベルクとの関係」と題して日本建築学会にて発表した。
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