本研究は、近代絵画などに大きな影響を与えたデ・ステイルの造形作品と、近代音楽に大きな影響を与えたアーノルト・シェーンベルクの音楽作品における共通性についての考察を通して、近代の芸術の変遷において、造形の歴史と音楽の歴史がお互いに影響を与え続けながら変遷していた事についてひとつの指針を導きだし、領域横断的な歴史 研究の活性化を目指している。 本年度は、『De Stijl』誌全号から全論文リストの整理・各年毎の執筆者リストなどを作成し、これを用いて『De Stijl』誌の論文整理を行った。またデ・ステイルの中心人物であるテオ・ファン・ドゥースブルフの初期の造形作品を中心としてデ・ステイルの造形作品と、アーノルト・シェーンベルクの「十二音技法」の音楽における構成手法の共通性について研究を行った。ここでは、ドゥースブルフが関心を持っていたシェーンベルクの音楽と彼の作品の関係に、「無重力」や「上下前後左右の消失」などの共通した鍵言語以外にも、「原形」からの「派生形」とその組み合わせのみによって作品が構成されているという共通する技術的な構成手法がある事を見出した。これは、シェーンベルクの音楽においては「十二音技法」における「原形」に対しての「反行形」や「逆行形」、「反行逆行形」であり、デ・ステイルの作品においては、絵画やタペストリーの制作における「原形」から「反転形」、「回転形」としたものである。この詳細に関しては、日本建築学会大会にて発表した。
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