本研究は、ものづくりの「作りの手個人の創意工夫」や「伝統的技術の戦略的継承法」に実践的にアプローチし、製作者が伝統的形態の継承と現代的な要素の採用をいかに戦略的に選択しているか観察分析をおこない、その製作と流通の歴史を掘り起こすことによって、「伝統的」とされてきた手工芸品の社会・文化的意義をめぐる従来の視点を大きく変えることを目的とする。 本年度は、次年度の本格的な現地調査にむけて、インド、グジャラート州東部アーメダバード県において、予備調査をおこなった。女神儀礼用染布の製作現場において、実際に製作に従事しながら、手工芸品の素材、道具、技術に焦点をおくと同時に、作業過程の中から「ものづくりの勘所」「作り手個人の創意工夫」について観察分析をおこなった。資料収集に関しては、アーメダバード県を中心に、研究対象に関係する古文書渉猟も遂行した。 これらの成果の公開については、来年度、民族藝術学会、意匠学会で研究発表することで、本研究をより広い地域的、理論的視野から検討し、学会論文を『国立民族学博物館研究報告』『民族藝術』『デザイン理論』などのジャーナルに投稿する予定である。
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