平成22年度は、提出した「研究実施計画」に基づき、GHQ占領期に京都市および京都府で発行された雑誌・新聞の検閲実態調査・分析を行った。本研究の目的は、メディアおよび表現に対する検閲の実態という実証的研究により、占領政策の性質やそれが内包する地域間の偏差を明らかにすることにあるが、当該年度の調査によって、京都市におけるGHQ/SCAPによる言論統制のありようの一端が解明された。たとえば、調査の対象とした短歌同人誌『新月』(京都市発行)は無名の一般庶民の表現の場でもあったが、それにもかかわらず極めて厳しい検閲下におかれ、削除の指示を受けた短歌の事例が複数確認できる。この事例から、たとえ地方発行の同人誌であったとしても、ジャンルによっては厳しい監視下にあったことが窺え、言論統制の影響が<地方>の言論環境・文化生成にも強く及んでいたことがわかった。また、『京都新聞』では、舞鶴港における引揚関連言説が多数掲載されているが、東西冷戦構造の影響もあり、特別な指示がなされ、厳しい監視下に置かれ続けたこともわかった。これらの調査によって、<地方>と<中央>との間に存在した検閲実態の共通性/差異、ジャンルや記事内容による差などが浮かび上がりつつある。以上のような、当該年度における研究の成果は、滋賀大学国文会(滋賀大学、平成22年12月5日)、20世紀メディア研究所;第59回研究会(早稲田大学、平成23年4月16日)において報告した。
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