研究課題/領域番号 |
22720081
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
天野 知幸 滋賀大学, 教育学部, 特任准教授 (40552998)
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キーワード | GHQ / 占領政策 / 検閲 / 地方 / 文学 |
研究概要 |
平成23年度は、提出した「研究実施計画」に基づき、前年から引き続いてGHQ占領期に京都市および京都府で発行された雑誌の検閲実態調査・分析を行うとともに、地方誌・紙の検閲実態の特徴を明らかにするために、比較対照材料として西日本で刊行された雑誌の記事分析も行った。 これらの調査の一部は、まず20世紀メディア研究所:第59回研究会(早稲田大学、平成23年4月16日)において報告した。この研究発表では、戦後の検閲研究に携わる多くの研究者からの助言を得られ、本研究の主旨とも密接に関わる地域間のメディア検閲組織(PPB)の検閲方針の違いや東京と地方の検閲作業の差異に関する教示も得られた。実例報告を他分野の研究者に向けて行うことができたと同時に、有益な情報も得られ、たいへん有意義であったといえる。その後は、京都市発行の雑誌記事の検閲実態の分析を進めるとともに、研究の効率化をはかるため、それらの資料の保存や整理も行った。また、検閲の揺れや複数性が地域間で存在したことを明らかにするために、引揚および共産主義という題材に注目して、京都と東京、京都と他の地方都市との検閲実態について調査した。福岡市において刊行されていた引揚関連雑誌(『みなと』)の事例分析からは、京都市と同様、「ソ連」関連記事に関する厳しい監視の視線が東京だけでなく地方メディアにも向けられていたことや、小規模なコミュニティーに向けたメディアも題材によっては厳しく検閲されていたことがわかった。 以上、23年度の研究から、検閲現場が持つ検閲の揺らぎ・偏差は、中央/地方間のメディアの違いだけでなく、地域固有の記事・テーマの違い、および地域のPPB(D1東京支部D2大阪支部D3福岡支部D4ソウル支部のち北海道)の違いからも生じているらしいことが具体例をもとに明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
去年に引き続き、関西を発行地とする雑誌、新聞記事の調査、分析を行っており、検閲実態に関する調査は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進のためには、実態調査、事例の分析をこれまで以上に数多くこなすことが何より重要であると考える。そのため、資料を所蔵図書館にて閲覧、複写し、それらを分析するだけではなく、これまで以上に資料の複写を集め、それらを画像データとして保存・管理することで、効率よく研究してゆきたいと考えている。
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