平成22年度は、『少年世界』(1895~1907)ならびに『教育時論』(1895~1907)の二誌における読書関連記事を中心に検討した。 『教育時論』における読書関連記事を検討したところ、少年雑誌が青少年に及ぼす影響を論じた記事が散見された。これらの記事には、読書全般を否定するのではなく、小説による悪影響を取り立てて論じたものが少なくないことが判明した。教育界においては、少年雑誌に小説を掲載することに対する共通理解が形成されていないことが示唆される。 『少年世界』の読書関連記事を検討したところ、以下のことが明らかとなった。 まずは、読者投稿欄において、小説の掲載をめぐる論争が認められた。とりわけ、小説有害論者の論調が『教育時論』にみられた小説有害論と同型であったことから、少年雑誌の読者の一部がメディアにおける小説有害論を共有していたことが明らかとなった。 次に、編集部の読書観であるが、論説の本数が少なかったことから、小説有害論者の投稿に対する編集部のコメントに注目することにした。これらのコメントには反論を寄せているケースが認められるなど、有害論を承知の上で小説を掲載していたことがうかがえる。なお、冒険小説が小説有害論的な立場の読者から例外的に認められるなど、ジャンルが小説の承認をめぐるポイントになっていることが示唆されたことから、ジャンル小説の検討にも着手した。
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