研究課題/領域番号 |
22720084
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
久岡 明穂 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 博士研究員 (20437510)
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キーワード | 読本 / 近世文学 / 日本文学 |
研究概要 |
本年度(平成23年度)は、以下のような調査・研究を行った。 馬琴読本にあらわれる思想を明らかにするため、江戸時代の思想、特に馬琴の時代に盛んになった水戸学思想と読本作品との比較検討を行うことで、水戸学思想と馬琴読本とを比較した。 水戸学思想の大きな特色は「三種の神器」の思想であると言われており、馬琴も『椿説弓張月』で、作中で「三種の神器」にひとしいものとして扱われる琉球の「珠」を力を入れて描いていることに着目した。「三種の神器」に焦点をあて、「三種の神器」の記述がある各文献(『古事記』『日本書紀』『神皇正統記』『神器考』『保建大記』等)を検討し、歴史上の「三種の神器」の位置づけの変遷とその中における水戸学思想の「三種の神器」思想の特徴と、馬琴の『椿説弓張月』における「三種の神器』思想との関連を検討した。 馬琴が『椿説弓張月』で二つの類似する出来事を描くことで、皇位継承における「神器」についての考え方を示しており、作品の内容に即して、馬琴の神器思想を検討した上で、歴史上における「神器」思想、江戸時代の「神器」思想との関連を考察した。 以上について2012年2月京都近世小説研究会で発表した。次年度は、これを学会発表(日本近世文学会平成24年度春季大会、於明星大学)の上、論文にまとめる予定である。さらに、「神器」思想による皇位継承のもとでの武士のありかたを検討し、江戸時代後期の思想における武士論と読本(特に史伝物)との関連を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水戸学の思想と馬琴読本の思想との関連、特に皇位継承に関する思想の関連がわかった。馬琴をとりまく創作環境については、続きを調査する。
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今後の研究の推進方策 |
江戸時代後期における「神器」をめぐる皇位と正統とについてすでに検討したので、さらに江戸時代の朝幕関係の状況から江戸時代後期における皇位と武士論との関係について皇位継承を扱った他の作品と比較し検討する。また、思想が馬琴、馬琴の作品、特に史伝物読本にどのような影響を与えているか、馬琴の史伝物読本ならではの特徴があるかを他の作者や文学ジャンルと比較して検討し、文学と思想との関連を明らかにする。
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