研究課題/領域番号 |
22720097
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研究機関 | 財団法人東方研究会 |
研究代表者 |
佐々木 一憲 財団法人東方研究会, 研究員 (80508515)
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キーワード | インド哲学 / オリエンタリズム / ラフカディオ・ハーン / 近代仏教学 / お雇い外国人 |
研究概要 |
本研究では、19世紀に本格化したインド文化の再発見に端を発する、西欧諸国における東洋学の大流行が、インド仏教の再発見を核とする<近代仏教学>の誕生と発展にどのような方向性を与えたのか。そしてまたその<近代仏教学>の形成が、その当時活躍した西欧文人の代表的人物の一人であるラフカディオ・ハーンの仏教摂取にどのように作用しているのか、ハーンの書き残した典籍への網羅的な調査も加えながら、探っている。23年度は主に<近代仏教学>方面の研究を進めたが、この後具体的に記すように、インドおよびアメリカに赴き資料収集・調査を行ったことで、神智学協会の影響を詳しく調査するなど、日本国内で入手可能な資料に基づく研究とはひと味違った、従来にない角度からの研究が出来たのではないかと考えている。年度前半は、前年の後半に引き続きインドでの長期渡航調査の機会が得られたことから、再び同国に赴き、シムラーおよびコルカタにて、西欧諸国のインド文化再発見の経緯について、文献資料の調査および現地の博物館・資料館の観覧などを通じて調査をした。とりわけ、インド文化再発見の拠点であった、コルカタのアジアティック・ソサエティに在籍して、発行当時の研究紀要の現物などを参照できたことは本件研究を進める上で非常に有益であった。年度後半は主にインド渡航中に入手した文献資料の読み込みと、当初、本研究の成果物として出版物の制作を予定していた、ハーンの仏教関係の代表的著作5作品の翻訳作業などを進めた。研究を通じて、ハーンの仏教研究の核心となる部分は、来日前、米国・ニューオリンズ滞在期に成し遂げられたものであることが明らかになってきたので、年度末にはニューオリンズを訪れ、同市テユレーン大学図書館に設置されているハーン関係特別資料室に赴いて、ハーンの当時の蔵書構成などを調査してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画よりも海外渡航調査の割合が多くなっているため、日本国内にいる間に進めようと計画していたデータベースの整備、ホームページの制作、研究成果の学会発表の方面で遅れが出ている。また、最初の計画では成果物としてハーンの仏教関係の代表的名作品5点の訳註研究をまとめて出版する予定であったが、出版社の方で需要が見込めないと難色を示しており、予算的に自費出版も難しいため、このテーマでの出版計画は頓挫している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の、現在遅れが出ている事項について、遅れを取り戻すべく作業を進めるつもりである。作業内容は決まっているので、これらについては時間が取れさえすれば、遂行は可能である。成果物の出版については、上記のテーマでの出版は難しそうだが、一方で、<近代仏教学>のテーマでは出版に興味を示している出版社があり、こちらでの出版にシフトすることも視野に入れている。学会発表については、隙間分野の研究ということもあって、なかなかふさわしい発表の場を見つけられないでいるのだが、今後も継続して申込み先を探していくつもりである。
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