(1)中世神道資料の調査・研究と、研究成果の展示公開 前年度に引き続き称名寺聖教中の中世神道資料の調査・書誌採録作業を行い、また写真撮影を進めた。 神奈川県立金沢文庫で平成23年10月幡日から12月4日まで開催した特別展「愛染明王」においては、三章立ての展示構成のうち最終章を「中世神道説における愛染明王」として、関連する造形作品と共に、称名寺聖教の中世神道資料のうち愛染明王に関わる聖教類を展示し、解説を加えて研究成果の一端を示した。 (2)重要資料の翻刻・研究 高野山大学図書館蔵高野山三宝院寄託本『荒神縁起事 付霊瑞』を翻刻し、略解題と、他伝本三本との主要校異を付して紹介した。本書は、日本の神仏習合の中で生まれた神格、荒神に関する資料で、その成立は鎌倉末期に遡る。荒神の図像に関する資料としても重要な情報を含んでおり、そうした点についても研究を進め、別稿にまとめた(来年度刊行予定)。 (3)美術・図像資料の調査 本年度は、中世神道説と愛染明王や『瑜祇経』注釈学との関わりに注目し、愛染明王や『瑜祇経』注釈学と関わる荒神の図像の調査に重点をおいた。具体的には、黒漆大神宮御正体厨子(奈良・西大寺蔵)、如来荒神曼茶羅図(三重・徳楽寺蔵)、三宝荒神像(奈良・吉祥草寺蔵)、伝神倉神社出土・愛染明王懸仏、伝小町塚出土・吽字連記瓦経(個人蔵)などについて詳しく調査を行った。また、西大寺の黒漆大神宮御正体厨子については、叡尊の伊勢参宮と関わる納入文書の内容を検討し、その成果を戒律文化研究会において報告した。
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