(1)中世神道資料の調査・書誌の採取と研究 前年度に引き続き、称名寺聖教中の中世神道資料の調査・書誌採録作業を行い、写真撮影を進めた。また、平成24年4月から7月にかけて奈良国立博物館および神奈川県立金沢文庫において開催した特別展「解脱上人貞慶」の中では、称名寺聖教中の春日社関係資料を展示し、春日信仰の展開における貞慶の意義を論じた解説を加えて研究成果の一端を示した。 (2)重要資料の翻刻・研究 称名寺聖教中の中世神道資料『日本得名』の全文を翻刻し、解題を付して紹介した。『日本得名』の伝本には高野山三宝院文庫本が知られているが、称名寺二世長老釼阿手沢の称名寺本は鎌倉後期写の善本である上に、独自の本文もみえる。解題においては、本文の筆跡が、御流神道の成立に関わった可能性も論じられている秀範の手と思われることや、内容に社参作法「伊勢灌頂」と深く関わる思想がうかがえる点などを指摘した。 (3)美術・図像資料の調査・研究 本年度は『春日権現験記絵』をはじめ、貞慶の春日信仰に関わる美術作品を広く調査することができた。また、如来荒神の図像の特徴について、三重県・徳楽寺所蔵の如来荒神曼荼羅図と、奈良県・吉祥草寺蔵の三宝荒神像を中心に、原本調査をふまえた分析を加え、如来荒神の像容の成立とその背景を明らかにする論文をまとめた。
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