平成24年4月~8月にかけて、Edgar Allan Poeの作品を精読。彼の後継者といわれる現代作家Paul Austerとの比較分析を「作家と経済」をキーワードに行った。作品以外にもPoeやAusterにまつわる歴史的資料にあたる中で、探偵小説というジャンルの脱構築的後継者といわれてきたAusterが、実はマガジニスト(文芸雑誌編集者)としてのPoeと自らを重ね合わせていることが明らかになった。文芸雑誌の編集、印刷、流通などにまつわる小説にもPoeの影響が明らかに見て取れることが分かった。平成24年9月には、ポー学会にてシンポジウムに登壇。4月~8月に行った作品読解・資料分析の成果を発表。平成24年10月~平成25年1月にかけて、9月の発表での内容を学術論文として完成させるために、さらに歴史的資料などの収集と分析を行った。Austerが作家デビュー前に編集を手掛けていた文芸雑誌を入手。2009年の小説作品Invisibleとの相互関係に関する分析をさらに行い、論文原稿の下準備作業を終えた。平成25年2月には、アメリカ合衆国ニューヨークに資料収集のため出張。「遺産相続」という経済的テーマを扱ったテネシー・ウィリアムズら代表作家の戯曲が現在のアメリカでどのように解釈されているかなどを、劇場などを中心にリサーチ。「遺産相続」から「ジェンダー問題」を論じることの有効性が明らかになった。 平成25年3月は、当該年度の大半をかけて調査してきたPoeとAusterの関係を「文学と経済」という視点からとらえなおした論文の執筆にあたった。また、3年間の研究の成果を発展的に報告する場として、平成25年度の日本英文学会九州支部でのアメリカ文学シンポジウム(タイトル:「アメリカ文学とお金」)を提案。関連の研究者の方々と意見交換を重ね、シンポジウムの実施が決定した。
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