本研究が対象とする領域は、現代ユダヤ系アメリカ文学である。現代ユダヤ系アメリカの特徴および特殊性を理解するために、初年度は先行研究の資料収集および現代ユダヤ系作家による作品収集を中心にして研究を行った。 まず、戦後から現代まで連綿として行われているホロコースト研究に着目して、ユダヤ系文学と関係が深いと思われる研究書を収集した。これら研究書に共通している点、あるいは類似している点を列挙することで、現代ユダヤ系文学が提示する問題意識との比較研究が行えると考えている。 その他に、現代ユダヤ系作家による諸作品を収集することで、上記の先行研究書との関連化を図った。具体名を挙げると、ポール・オースター(Paul Auster)、エイミー・ベンダー(Aimee Bender)、レベッカ・ゴールドスタイン(Rebecca Goldstein)、メルヴィン・ジュールズ・ビュキート(Melvin Jules Bukiet)などの現役ユダヤ系アメリカ作家におけるホロコーストに対する姿勢の幅広さを見出すことが出来たことは大きな成果である。その実践報告として、日本アメリカ文学会が発行する学会誌に拙論が掲載された。 また同学会が主催する全国大会に参加することで、現代ユダヤ系アメリカ文学と他の現代アメリカ文学との関連を考えさせられる研究発表を幾つか拝聴することが出来た。先行研究から現行課題を導くだけでなく、このように同時代における研究との比較から当該研究の独自性を見出すことも重要であるとの認識を得ることが出来た。次年度での研究に活かしたい。
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