研究課題/領域番号 |
22720112
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
迫 桂 慶應義塾大学, 経済学部, 専任講師 (60548262)
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キーワード | 英米文学 / 戦後・現代イギリス小説 / 老い / ジェロントロジー / イギリス社会文化史 |
研究概要 |
今年度は、文献資料の調査分析を継続すると同時に、前年度までの研究で明らかになった「老い」の社会的・文化的意味を踏まえ、文学作品における「老い」の分析を進めることを主な目標としていた。そこで、具体的な視点(テーマ)を見つけることが課題であったが、研究を進めた結果、「語り」の要素と認知症という二つを定めた。これら二つを切り口として、以下のように研究を進めた。 認知症に焦点を当てた文学テキストの分析を進めるのに先立ち、認知症と老いとの関係についての先行研究の調査を行った。医学、哲学、社会学分野の文献が主であったが、認知症と老いに関連する理論や議論点の理解につながった。また、文学分野で認知症をテーマにした研究例も調査した。これは方法論の参考としても役に立った。 「語り」は文学研究において重要な概念、要素であるが、老年期と「語り」のテーマをより深く発展させるために、ナラティブ・ジェロントロジーという新しい分野の研究について文献を通して学んだ。その結果、老齢期における語ることの重要性が分かった。また、ライフコースを「物語」と捉え、文学作品をその表象と解釈することで、老齢期についての理解が深まるだけでなく、人間のアイデンティティー形成の複雑さとライフコースについての様々な思想が浮き彫りになることが分かった。また、認知症患者を理解する際にも有効なアプローチであることが分かった。 以上の調査研究を踏まえて、具体的に文学作品を分析し、「老い」がいかに表象されているか、そこから「老い」をいかに理解できるかの考察を進めた。また、「老い」をテーマとする二つの国際学会で研究成果の報告を行った。これらの学会では、複数の関連分野の研究動向を把握し、研究者と情報・意見交換を行う機会にも恵まれ、本研究課題の方向性を考えるうえで非常に有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特定の文学作品の分析結果を学会で発表した後、雑誌論文として出版することを目指して論文作成作業を開始したが、まだ執筆途中である。また、これらを執筆するため、その他の文学作品を読み、分析する作業が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる今年は、研究成果をまとめて論文として発表、または、口頭で発表するための準備を進めたい。
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