研究概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀初期のアメリカ文学における「アメリカンガール」表象を考察し、その変容と、文学的・文化的位置づけを探るものである。平成24年度は、前年度までの成果を発表するとともに、平成22年度、23年度の研究を踏まえたうえで19世紀後半から20世紀初期のアメリカ文学において「アメリカンガール」像がいかなる変遷を辿ったか、また“girl”という概念がアメリカ文学史においてどのように位置づけられ、どのような意義を果たしているのかを考察した。 平成24年度前半は、前年度研究の成果を日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会、国際学会Conversazioni in Italia: Emerson, Hawthorne, and Poeにて発表し、論文を推敲した。研究発表では、Nathaniel HawthorneのThe Marble Faun(1860)において、これまであまり取り上げられることのなかった「アメリカンガール」ヒルダに焦点を当て、当時流行していた「ヨーロッパを訪れるアメリカンガール」という文学テーマから再考した。それを通して、ヒルダがいかに国家とジェンダーの境界を揺るがしているかを考察すると共に、ヒルダがヴィクトリア朝的な「ガール」像と世紀転換期の「ガール」像との間に位置づけられることを論証した。発表時に得られた出席者からのコメントを元に修正し、論文としてまとめたものを現在投稿中である。 平成24年度後半は、平成21年までの研究および平成22年度からの科研費研究を踏まえ、19世紀後半から20世紀初期のアメリカ文学における「アメリカンガール」表象を展望する論考を書籍として出版すべく、研究のまとめを進めた。
|