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2010 年度 実績報告書

現代アメリカ文学における歴史の概念について

研究課題

研究課題/領域番号 22720120
研究機関同志社大学

研究代表者

藤井 光  同志社大学, 文学部・英文学科, 助教 (20546668)

キーワード現代アメリカ文学 / Richard Powers / 物語行為 / 時間性 / ロード・ナラティヴ / 多和田葉子 / Daniel Alarcon / 記憶
研究概要

平成22年度においては、歴史という概念と対峙しつつ、歴史という枠組みからはみ出るような時間のあり方、また、その時間性が伴う、「主体」とは異なる自己のありようを、物語行為がどのように実践し生み出しているのか、という点を中心として研究を行った。
まず、歴史という時間のあり方に対抗するような時間性の実践を、物語という行為に見出している小説として、Richard Powersによる1988年の小説Prisoner's Dilemmaに分析を加えた。歴史によって自らが「囚人」とされているという状況からの「出口」を、物語行為による記憶および過去の積極的な改変に見出すPowersのテクストのダイナミクスが、現代アメリカ作家たちによる「外部」という概念の追求の一部を成していることを確認した。
さらに、アメリカ合衆国の歴史、およびナショナル・アイデンティティの重要な要素である「ロード」体験に考察を加えた。ロサンゼルスという、しばしば「反ロード」的と形容される都市を舞台とした現代文学のテクストにおいて、アメリカ的な自己を規定する「ロード」という主題がどのように取り扱われているのか、という問題に絞り、Jack Kerouacから始まり、Joan Didion、Richard Powers、多和田葉子らのテクスト群を考察した。直線的な歴史意識、および未来への「開かれ」を前提とした「ロード」の時間性が、現代作家たちのテクストで転覆され変容されていることを論じた。
その他、口頭発表の場において検討したのが、ペルー生まれの作家Daniel Alarconの諸作品である。Alarconは単なる移民文学の枠にとらわれることなく、特に小説Lost City Radioにおいて、国家が作り上げる歴史という枠組みに対する批判的な視点から、記憶と忘却という主題を探求している。Alarconの当該小説は、2012年に新潮社より翻訳を出版することが決定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Let the Story Begin : Cinematic Field and Narrative Act in Richard Powers's Prisoner's Dilemma2011

    • 著者名/発表者名
      Hikaru Fujii
    • 雑誌名

      同志社アメリカ研究

      巻: 47 ページ: 31-50

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Land of the Freeway:ロサンゼルスとアメリカン・ロード2011

    • 著者名/発表者名
      藤井光
    • 雑誌名

      北海道アメリカ文学

      巻: 27(掲載確定)

    • 査読あり
  • [学会発表] The Land of the Freeways:ロサンゼルスとロード・ナラティヴ2010

    • 著者名/発表者名
      藤井光
    • 学会等名
      第20回日本アメリカ文学会北海道支部大会
    • 発表場所
      北星学園大学(札幌)
    • 年月日
      2010-12-18
  • [学会発表] 歴史に対する物語の作法:Daniel AlarconとLost city Radioをめぐって2010

    • 著者名/発表者名
      藤井光
    • 学会等名
      第55回日本英文学会北海道支部大会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌)
    • 年月日
      2010-10-03
  • [図書] 奪い尽くされ、焼き尽くされ2010

    • 著者名/発表者名
      ウェルズ・タワー(藤井光訳)
    • 総ページ数
      271
    • 出版者
      新潮社

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公開日: 2012-07-19  

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