研究概要 |
今年度行った主要な調査・研究活動、成果の発表は以下の通りである。 1)今年度は、第一次世界大戦を扱った比較的近年の文学作品ならびにジャン・ノルトン・クリュの『証言者』に関する文献を中心に収集した。また、フランスはヴェルダン近郊にあるドゥオーモンの戦跡を訪れ、ヴェルダン市内の戦争博物館を見学し、さらにマルヌ地方にあるナヴァラン農場の戦死者に捧げられたモニュメントを視察することによって、「戦争文化」の現状を調査した。とりわけヴェルダンでは、ヨーロッパ統合と独仏融和の象徴として、現在ではこうした戦跡が用いられていることが理解された。 2)本研究の研究成果も取り入れてH22年3月に出版された拙著『表象の傷』をめぐり、京都大学人文科学研究所共同研究班「第一次世界大戦の総合的研究」で公開合評会を行った(2011年10月8日)。 3)京都大学文学部フランス語学フランス文学研究室、関西日仏学館共催による国際シンポジウムComment la fiction fait histoire?-emprunts, echanges, croisements(「フィクションはいかに歴史を作るか-借用・交換・交差」、関西日仏学館、11月18-20日)に参加し、《La haine de la fiction?」-A propos de Temoins de Jean Norton Cru》と題された報告を行った。この報告では、証言というジャンルが第一次世界大戦をきっかけに重要性を増したこと、そしてそのジャンルにおいては、真実性の要請と美学的な要請が緊張関係に置かれていることを論証した。
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