1.ドイツ芸術アカデミーのベンヤミン・アーカイヴからの依頼を受けて、日本におけるベンヤミン受容について、とりわけ翻訳という観点から発表を行った。すでに1960年代からベンヤミンを翻訳・受容してきたなかで、「子ども」というテーマが日本のベンヤミン研究においてクローズアップされてくるのは1990年代以降であることを示し、子どもと同時に「都市」というテーマにも注目されていることを明らかにした。これは今後の研究者のテーマである「都市(とりわけベルリン)における子ども像」という問題圏の考察への予備調査となった。発表内容は、ウィーン大学翻訳研究所との協力で論文集として刊行する予定で調整中である。 2.ドイツ19世紀文学研究の一環として、1810年頃のベルリンを舞台とする文学活動に関する研究を行った。とくに取り上げたのは、「ドイツ晩餐会」に関係する作家たちとそこで発表された作品である(ブレンターノ「歴史の前、中、後における俗物」、アルニム「ユダヤ気質のしるし」等)。彼らが主張する文学的態度と彼らの「子ども」へのアプローチがどのように関係するのかを、論文として刊行する予定である(論文集の書籍としての刊行は2015年)。 3.ベンヤミンを新たな読み直しの一環として、『ベンヤミン・コレクション7』(2014年刊行予定)に収録予定の作品を翻訳した。担当した作品のなかには、子どもの文字学習本についての書評や教育関係の小論が6編含まれている。ここに翻訳した作品は、ベンヤミンが子どもの文字学習というテーマに対して、たんに教育的な観点からのみ関心を抱いているのではなく、そもそも「文字」が思考に入り込んでくることの意味という点から、子どもの文字学習を捉えているということが明らかになっている。
|