本研究の目的は、ビルマ国文学の核である「タチンジー」と総称される古典歌謡におけるジャンル形成過程を明らかにすることである。22年度の作業として実施したのは、第一に、現地における古典歌謡教授方法・芸能コンクールの調査(9月)である。報告者はビルマ古典歌謡の楽器である竪琴の曲の中でも、最も難易度の高いジャンルであるパッピョー(鼓歌)の作品を、マンダレーにおける代表的な竪琴教師のドー・キンメイから受けている。また、未修得であったディン歌謡と呼ばれるジャンルの演奏法を学んだ。さらに、子供たちへの口頭伝承による竪琴教授の模様をビデオ撮影などの形で調査・記録した。ビルマ古典歌謡の教授は現在でも口頭による伝承が主であり、定期的に現地で演奏技法の教授を受けることは、口頭伝承のあり方を実体験するために重要であり、本研究課題の目的であるジャンル形成過程を明らかにするために欠かせない。さらに22年度はこれまでの調査の結果を踏まえた上で、ビルマ研究の唯一の国際学会であるBurma Studies Conferenceにおいて口頭伝承と書承による古典歌謡の伝承の実態について口頭発表(英語)を行った。さらに、2007年度に学位取得した博士論文ならびにこれまでの投稿論文を改稿するかたちで校正に取り組み、単著『ビルマ古典歌謡におけるジャンル形成』を出版した。併行して、本研究の主な目的の一つである、ビルマ古典音楽のアナログ音源のデジタル化を引き続き行い、整理する作業を進めた。
|