研究課題/領域番号 |
22720140
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 さゆり 大阪大学, 世界言語研究センター, 講師 (40447503)
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キーワード | ビルマ / 古典歌謡 / ジャンル / 写本 / 旋律 |
研究概要 |
本研究の目的は、ビルマ国文学の核である「タチンジー」と総称される古典歌謡におけるジャンル形成過程を明らかにすることである。23年度の作業として実施したのは、第一に、現地における古典歌謡教1受方法の調査(8-9月)である。報告者はビルマ古典歌謡の楽器である竪琴の曲の中でも、最も難易度の高いジャンルであるパッピョー(鼓歌)の作品を、マンダレーにおける代表的な竪琴教師のドー・キンメイから受けている。さらに、口頭伝承による竪琴教授の模様をビデオ撮影などの形で調査・記録した。ビルマ古典歌謡の教授は現在でも口頭による伝承が主であり、定期的に現地で演奏技法の教授を受けることは、口頭伝承のあり方を実体験するために重要であり、本研究課題の目的達成のために欠かせない。さらに23年度はこれまでの調査の結果を踏まえた上で、ミャンマーで初めて開催されたビルマ音楽の国際シンポジウムCelebrating the Legacy of U Ko Ko:Symposium and Concerts-June25-28Yangon"において、"Song Genres in Manuscripts of Myawadi Mingyi U Sa's Anthology"のタイトルで口頭発表(英語)を行った。さらに、9月にやはり「ミャンマーで開催された、竪琴奏者ウー・ミィンマウン没後10周年記念式典において、"Hsaya U Myint Maung ye notation i chezu(ウー・ミィンマウンの記譜)"のタイトルで口頭発表(ビルマ語)を行った。併行して、本研究の主な目的の一つである、ビルマ古典音楽のアナログ音源のデジタル化を引き続き行い、整理する作業を進めた。また、アメリカの民族音楽学者Judith Becker氏から譲渡された、現在では希少な1960年代のビルマのレコードのデジタル化の作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は初めての現地ミャンマーでの口頭発表の機会を当初の計画以外にも得て、合計2回行うことができた。また、現地でもほとんど実物の残っていない希少なレコードの譲渡を受け、そのアナログ化及び中身の分析を行うことができたことから、本研究課題遂行に重要な資料の裏付けが出来た。さらに、当初の計画になかった1950~80年代の音楽雑誌分析を進めることができたため、作業自体は当初の計画以上に進展した。一方、論文の発表が間に合わなかったため、(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、歌謡集写本の分析を引き続き進めて、古典歌謡のジャンルが形成されてきた過程を詳細に分析する。報告者がヤンゴン国立図書館で収集した、1950~80年代の音楽雑誌の分析を現在進めているが、これを用いることで、ビルマにおいて、独立期から社会主義政権時代にかけて古典歌謡の実態が作り上げられていったことを明らかにできると考えられる。この作業により、古典歌謡のジャンル形成がより強化されていった過程を明らかにできる。資料は既に収集済みであることから、本年度はこれら資料の整理、分析を進め、本研究の課題遂行を行う。
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