明代戯曲テキストの受容を明らかにすることを研究の目的とし、本年度は特に、資料調査と資料収集に重点を置いて進めることとした。 現地での資料調査は、研究実施計画どおり、中国と韓国(国外)、東京(国内)においてそれぞれおこなった。戯曲作品の名作である『拝月亭記』『荊銀記』『西廂記』を中心として調査および検討を進めた。韓国では、国立中央図書館、ソウル大奎章閣図書館、延世大、高麗大で調査および資料の複写をおこなった。『西廂記』は金聖嘆本をはじめとするいくつかの抄本について検討した。なお、今回の研究目的からはやや外れるが、抄本のハングル翻訳本もかなり現存しており、これらは金聖嘆本に基づいている可能性が高いと思われる。中国では、北京の中国国家図書館において、『拝月亭記』及び『荊銀記』について、複数の版本(マイクロフィルム)を調査した。東京では主として内閣文庫で『西廂記』の調査をおこなった。 以上の現地調査結果のほか、リプリント版が出版されているテキストについては、事前に比較・分析を進めるとともに、関連する資料の収集にもつとめた。次年度においても、さらに調査を進める。 また本年度は、明代戯曲テキストの成立に大きな影響を与えている元代雑劇の訳注作業も進め、共著として出版した。さらに明代のあと、清朝以降に発展した京劇の著名な俳優である梅蘭芳の芸談録の訳注も作成した。いずれも、次年度に継続していく予定である。
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