具体的内容 昨年度収集した資料及び今年度新たに収集した資料により、複数の明代戯曲作品の比較検討を行った。特に、明代の主要な戯曲集を網羅し、収録される演目を分類し、その特徴と傾向を分析した論文を発表した。さらに、今回の科研による研究内容については平成24年度に公表予定であり、出版助成を申請している。また、前段階である元代の雑劇についても、昨年度に引き続き共同研究を進めており、これについては平成24年度の順次公表する予定である。 このほか、今回の研究の発展的内容として、戯曲の受容に大きく関わった明代文人の交友関係を明らかにする研究も進め、学会発表を行った。さらに、清代後期に出版された小唄・芝居の一幕を収めた唱本についても研究を進め、共著で訳注を公表した。また、昨年からの継続で、民国期に京劇の発展に寄与した俳優、梅蘭芳の自伝の訳注も公表した。 意義、重要性 元代に雑劇が発生・発展した後を承け、明代においては南方を中心として様々な地方劇が相継いで流行した。資料が限られる元代に比べ、明代は出版業の勃興とともに大量の戯曲作品が出版刊行され、比較検討が可能な資料が豊富に現存している。さらに、明代の戯曲は、のちの清代以降に成立・発展する京劇などの原型ともなっている。伝統演劇の演目の変容を明らかにしていく上で、明代の戯曲テキストは中国戯曲史においてその発展を跡づける看過できない重要な資料であるばかりでなく、演劇が多くの観客によって受容されるものである以上、当時の社会状況を色濃く反映するものであることはいうまでもなく、こうような点からも当時の社会を知る上でも研究の対象とする意義は大きいと言える。
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