●基礎的研究の成果 申請者による従来の「六朝に於ける『山海経』」研究を基盤とし、その対象を多くの異民族が南北に入り乱れた漢魏晋南北朝時代の神話神仙的図像と文献に拡張。古来の中国神話を保存する『山海経』の受容状況の検討を軸として、漢魏晋南北朝時代の政治と文学の関わりについて考えた。その結果、以下の研究成果を得た。 往古の風神である「鳳凰」が、道家思想の影響を受けつつ『山海経』に書き留められた過程については先行の論究(松田1984)に詳しい。これを踏まえ本研究では、漢以降、動乱の六朝を経て唐に掛けて成立した一連の瑞祥志(前田尊経閣文庫『天地瑞祥志』・ペリオ文書『瑞応図』等)の「鳳凰」の項目の冒頭に描かれる、従来未検討の「鳳凰に似る四羽の凶鳥(發明、焦明、〓〓、幽昌)の存在に着目し、各種文献(史書・緯書等)の既述を手がかりにその成立過程を検討。その結果、本来は「鳳凰」と併せ五方の神鳥であった發明、焦明、〓〓、幽昌が、「鳳凰の出現にも関わらず王朝は滅んだ」という凶事の続いた魏晋六朝に掛けて次第に凶兆としての様相を帯び始め、六朝末~初唐に成立した多くの瑞祥志(図)の「鳳凰」の冒頭に示されるほど重要な瑞祥となるに至ったものと結論した。 ●図像研究(フィールドワーク)の成果 『山海経』の神話世界と基盤を同じくする神話的瑞祥の研究として、中国浙江省海寧市出土の漢~三国画像墓の瑞祥図を調査(9月4日~9月8日、海寧市博物館館長および浙江省師範大学・黄雅峰教授の協力を得る.)
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